<ガンガサガールの火葬>

ガンガサガールの火葬

 夕暮れ時、宿にしている寺院に帰る途中、音楽隊の列に出会った。列の中程には、白い布を被せた担架をかつぐ人達がいた。葬儀の列のようだ。担架の上で、人型に盛り上がった白い布には、別れの真っ赤な花が置かれていた。私は参列することにした。

 

 砂浜に着くと、数人が地面を指さして確認している。ここで火葬するようだ。砂浜に穴を掘り、薪を重ねていく。その傍らには担架に乗った亡骸が静かに置かれている。私はその光景を写真に収めた。すると、一人の男が私に話しかけてきた。一瞬、まずかったかと思ったが、男は

 

「亡骸は自分の母親であり、私は長男で、母親の隣にしゃがみ込んでいるのが次男だ。生前の母は立派な人で、もし良ければ、母の写真を撮って欲しい」

 

と私に語った。正直、困惑した。死んだ人を撮れと言うのだ。男は、母親のもとへ行き、白い布を剥がし、その顔を見せてくれたが、そこには、母親という言葉からくる優しいイメージなど全く感じられない、人形の様な顔があるだけだった。それは人間ではなく、すでに物だった。

 

 しばらくすると、亡骸は薪の上にうつ伏せに置かれ、両手足を畳まれ、その上に、更に薪を積まれ火を着けられた。大きくなった炎は海風に煽られ、火の粉は虫のように青黒い空へ飛んで行った。

 

 積み上げられた薪も完全に崩れ、携帯用のガラスランプに火が灯った頃、人々は、最後の儀式を終えて帰り始めた。私は、唖然とした。そこには、灰や儀式で使われた物がそのまま残されているのである。長男に、その事について聞くが、そのままでいい、お前も一緒に夕食を食べに行こう、と言うだけであった。私は釈然としないまま彼らについて行った。食事の後、私は、彼らと固い握手を交わし、宿へ戻った。

 

 翌朝、起きると、すぐに昨夜の砂浜に向かった。あれがどうなったのか確認したかった。

 

 砂浜に着くと、私は、鳥肌が立つのを感じた。昨夜、火葬が行われた場所は、潮が満ちていて、火葬で残った物は、波によって洗われ、海に引き込まれていた。そこには、ただ、引いては返す波があるだけだった。母親は自然の力によって海に帰されていた。